第10回:ニールセン/交響曲第4番<不滅> Op.29

 カール・ニールセン(1865~1931)はデンマークの作曲家で、6曲の交響曲をはじめ、フルート協奏曲、クラリネット協奏曲、ヴァイオリン協奏曲、木管五重奏曲あたりが代表的作品。
 で、今回は彼が1914年から16年にかけて書いた交響曲第4番<不滅>について。タイトルはニールセン自身によって付けられたものですが、もう少し直訳に近い感じだと「消し難きもの」というニュアンスになるそうです。では何が「不滅」であったり「消し難」かったのか。それは作曲された時期にも注目していただきたいのですが、その頃はちょうど第一次世界大戦が起こっていた時期に当たっています。デンマークは中立国家としての立場を取ったためニールセン自身が直接的に戦争に関わることはありませんでしたが、世界規模での不安や危機的状況は彼に大きな影響を与えたものと思われます。
 結果的に、残念ながらその後も世界規模での戦争や国際的に高い緊張をもたらした出来事は頻発していますが、ニールセンやその時代の人たちにとっては、彼らが経験しつつあった戦争こそ史上最大(もちろん最悪でもあるのですが)の危機的状況なものと受け止めていたのではないでしょうか。数知れない程の犠牲者と終わりの見えない破壊に対する恐怖と絶望は計り知れないものだったはずです。
 その状況で何をするか。作曲家であるニールセンは音楽を書きました。それが交響曲<不滅>です。実際のところ、ニールセンはタイトル以外、曲中には標題的なことは何も記していません。ですから作品そのものが語っていること、鳴り響く音楽そのものが全てです。もし僕がタイトルと音楽から何かを汲み取ろうとするのであれば、それは例えば人間性への信頼であり、不断の生命力の存在への信頼というようなことではないかと思うのです。まあ、これは皆さんにも是非聴いていただいた上で、何かを感じたり、考えていただければそれで良いと思います。
 編成はフルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットが各3、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3とチューバ、弦楽5部、それにティンパニが2組。ブルックナーやマーラーの交響曲程ではないにしても、それなりに大きな編成と言えるでしょう。特に通常は1組であることが多いティンパニが<不滅>では2組というのが非常に特徴的でもあります。最後の部分で2組がソリスト的に掛け合いを行うように書かれているのですが、それは劇的で激しいことから「ティンパニ・バトル」と呼ばれることもあります。また、それ以外の木管、金管、弦楽の各パート全てに聴かせどころがある曲ですので、オーケストラの響きも存分に体験できる作品とも言えるでしょう。
 全曲は35分程で切れ目なしに続きますが、大きく4つの部分に分けられます。第1と第4の部分は劇的かつ運動的な音楽で、間の部分には穏やかで素朴さのある音楽と、厳しく崇高さを求めるような音楽が挟まれています。第1の部分の最初に、跳ねるようで躍動的なフレーズと伸びやかに奏されるフレーズの2つが現れますが、これらが全曲のモットーとも言うべきものです。これらが第4の部分で再帰して来るのですが、それこそまさしく圧倒的なインパクトがあります。
 例によって個人的な話をすると、僕は大学生の時にこの曲を演奏しました。実力に見合わない挑戦でしたが、曲への強い共感と指揮をお願いした故・小松一彦さんの素晴らしい指導で、実力以上の演奏になったと思っています。まあ、演奏することが決まるまで、僕は作品はもちろんニールセンのことすら知らなかったのですが。
 さて、僕にとっては当然のことながら、僕は程なく<不滅>もニールセンもすっかりお気に入りになったので、演奏会本番までの半年ちょっとだけでなく、演奏会後も<不滅>のディスクをひたすら探し求めたものです。ついでに言えば、この時に合わせて知ったニールセンの交響曲第5番Op.50も超が付くぐらいの名曲だと思っていますし、今となっては<不滅>以上に聴いている作品です。今回はこれ以上突っ込みませんけれど。
 で、<不滅>のディスクについて。カラヤン/ベルリンpo(DG/ユニヴァーサル)やバーンスタイン/ニューヨークpo(Sony)なんかもありますが、まずはヘルベルト・ブロムシュテット/サンフランシスコso(Decca/ユニヴァーサル)とかサイモン・ラトル/バーミンガム市so(EMI/ワーナー)あたりを聴くことが多いでしょうか。他にもエサ・ペッカ・サロネン/スウェーデン放送so(Sony)ジャン・マルティノン/シカゴso(RCA)アンドリュー・デイヴィス/BBCso(Virgin)も好んで聴いています。ああ、あと別格なのは「青春の思い出」という意味で自分たちの演奏音源を起こしたCDですかね(笑)。
f0306605_204599.jpg(左:ブロムシュテット盤、右:ラトル盤)f0306605_21304.jpg※両方ともジャケット違いやカップリング曲違いのものも出ていますので、これはご参考程度で。
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by ohayashi71 | 2014-02-14 02:05 | 本編 | Comments(0)


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