はしやすめ その3:郡上踊り

 季節外れの話ですが盆踊りのことを。
 僕はバルトークの音楽に興味を持つようになってから民俗音楽にも関心を持つようになりました。最初は「ブルガリアン・ヴォイス」と呼ばれる、地声で歌って独特なハーモニーとリズムが斬新さを感じさせるブルガリアの女声合唱から入りました。それで、民族音楽の面白さが少し分かるようになって東欧や中東、インド、アフリカと辿っていくうちに、ようやく日本の民俗音楽に行き着いた訳です。
 ところが日本の民俗音楽と言ってもジャンルの幅が広いので、何処から手を付けるのが自分にとって面白がれるのか分かりませんでした。そう思っている時に図書館で出会ったのが、音楽之友社から出ていた<日本の音>という5巻からなるCD付きの書籍でした。大きく「声の音楽」と「楽器の音楽」、「総合」と分かれていて、国立劇場の公演で収録されたような音源とかも含まれていて、多分普通の市販されているCDでは出回っていないような音源もたくさんあるのではないかと思います。
 その中でいちばん面白かったのが民謡の部分でした。プロの民謡歌手ではなく、恐らく現地の人たちが歌っているようで、荒削りかもしれないけれど、その分素朴な美しさやエネルギーをよりストレートに感じさせてくれるものでした。それは、五線譜に記して作られた歌曲なのではなく、農作業や漁などの労働の調子を整えるため、あるいは豊作や豊漁を祈るために結果として出来た歌であり、日常で抱く感情を表すために結果として出来た歌であり、ということが分かった、という意味です。
 宮城の<大漁唄い込み>、青森の<ホーハイ節>、群馬の<八木節>、山形の<花笠音頭>などは繰り返し聴きました。しかし、僕の中でダントツのお気に入りになったのは岐阜の<郡上踊り>でした。収録されていた音源では、中庸なテンポの曲とそれよりも速いテンポの曲の2曲が入っており、笛と三味線、太鼓の囃子に盆踊り歌が乗っかるかたちになっていました。そして、2曲とも絶妙に粋でカッコいいのです。特に2曲目のリズミカルな音楽は僕の大好物になりました。
 ということになったのが、多分1990年代の終わり頃から2000年代の頭ぐらいの時期のこと。
 で、郡上踊りへの関心はひとまず定着しました。その後、2005年に僕は大分を離れて兵庫県西宮市に移りました。その年の夏休み、僕はふと思い立って郡上踊りを現地まで観に行くことにしました。郡上八幡市は、僕のような公共交通機関移動しかしない人間からすると不便な場所ではあります。まあ、それでも興味の方が勝ったのですね。あと体力的な自信も。
 どうせ観るなら有名な徹夜踊りを、というつもりで移動したので、乗客で満員の長良川鉄道に乗って郡上八幡駅に着いたのは夜の9時ぐらいだったのではないかと思います。駅は街の中心部から少し離れているので、最初はまだ人の多さを理解していなかったのですが、歩いて行くにつれ、僕は全く初めてのことに驚いてしまいました。通りから通りでずっと踊っている人だらけで、それを建物に沿って立つ見物客が眺める、という景色が延々と続いているのです。しかもどうやら踊っているのは地元の人たちだけでなく観光客の方もどんどん入っていっているよう。多分、見物人より踊り手の方が何倍も多いはず。とりあえず整然と踊られる鶴崎踊り(僕のイメージでは、ですけれど)あたりとは全然違う。とにかく圧倒されました。
 しばらくして、いちばんメインにあたるような交差点に辿り着きました。そこは交差点の真ん中にお囃子の屋台が置かれて、そこで生演奏したものをスピーカーで各方向に流していました。その辺りの人の密度もさることながら、熱気たるや。
 <郡上踊り>にはいくつかの曲があり、テンポやリズムもさまざまに異なります。そのどれもが特徴的で覚えやすい。そして歌い手もみんな巧い。名調子というのはこういうことかと思いましたね。
 踊りもカッコいいのですが、僕は音楽を聴くことを主目的で行ったので、全く踊りませんでした。そもそも一人で行っているから気恥ずかしさもあったのですが。とにかくその熱気に浸れただけで大満足でした。
 しかし既に日付が変わって深夜なので、さあ帰りましょう、という訳には行きません。なので、ぐったりしながら始発便を待って名古屋方面に向かいました。因みに、その年は名古屋万博があった年で、せっかくだからそこにも行ってみようかという気もあったのですが、既に気力も体力を使い果たしていたので敢え無く断念して西宮に帰ったのでした。
 さて<郡上踊り>。もし現地で観られる機会があれば是非お薦めしたいのですが、そうもいかない方には音楽だけでも。因みにyoutubeには「徹夜完全版9時間ノーカット」という映像もアップされているようですが(笑)。
 ということで<日本の祭り 郡上おどり>(キング)というCDを。ここには<郡上踊り保存会>による歌と囃子で収録されています。僕が<日本の音>で感激した2曲、<かわさき>と<げんげんばらばら>をはじめ、威勢の良い<春駒>、ドラマティックな<ヤッチク>など全10曲を収録しています。名調子と合いの手の呼吸の良さ。名演。
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by ohayashi71 | 2014-11-26 22:04 | はしやすめ


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