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第48回:ソレル/ファンダンゴ

 チェンバロのための作品を。
 前にジェルジ・リゲティの<ハンガリアン・ロック>という、チェンバロに対して「無茶ぶり」な曲を取り上げましたが、今回もなかなかの曲です。リゲティのは20世紀の作品でしたが今回は18世紀、もろに「クラシック」な音楽と言って差支えないでしょう。しかし、ひねりはあります。
 スペインの作曲家、アントニオ・ソレル(1729~83)の<ファンダンゴ>という作品です。ソレルはスペインの宮廷に仕えた作曲家で、ポルトガル経由でイタリアからやってきたドメニコ・スカルラッティ(1685~1757)に学んだと言われています。スカルラッティは単一楽章で出来ているチェンバロのためのソナタを500曲以上遺しており、元々は練習曲として書かれたそれらに盛り込まれたさまざまな演奏技巧やスペイン風の楽想はソレルにも影響を与えたと考えられています。ソレルも100曲ほどのソナタを書いており、その中にも面白いものがあるのですが、今回は<ファンダンゴ>で。
 ファンダンゴはスペインのアンダルシア地方の民族舞踊のひとつで、現在フラメンコとして知られている芸能が成立していくにあたって重要な位置を占めているものとされています。活発な3拍子系で、ギターやカスタネットで伴奏されることが多いようです。
 ソレルの<ファンダンゴ>は演奏時間にして10分前後を要します。最初に導入的な部分が現われますが、その中で既に曲の根幹となるパターンが出てきます。左手(低音部)に出る「ラ―↑ラ―↓ミ―↓ド♯―↓ラ―↑ソ/ファ―↑ラ―↓レ―↓シ♭―↑ソ―↓ソ」という2小節の動きがそれです。これが執拗に執拗に繰り返されるのと同時に、さまざまなスペイン風なメロディやリズムを持ったフレーズが次々に繰り出されていくのです。細かい3連符や6連符をいくつも含んでみたり、妖しく半音階で進んでみたり、同じ音の素早い連射が出てみたり。しかもそれらは折り目正しく4小節や8小節ごとにきちんと区切りを付けられるようなものではなく、即興性に富んだ、音の勢い自体に完全に流れを委ね切った状態で進められていきます。
 多分、この<ファンダンゴ>を聴いた人の多くが思い浮かべるのは、フラメンコで激しく掻き鳴らされるギターの音楽そのものじゃないか、ということなのでは。そしてチェンバロがギターと同じ撥弦楽器であることもそれには作用しているはずです。こんな強烈なチェンバロ音楽が18世紀に存在していたなんて。
 ディスク。前述したとおり、即興度合いの強い音楽ですから、それをいかに出すか。僕の好みで言えば、基本のテンポ設定を少し速めに取り、それを流れに応じて柔軟にかつ大胆に変化させていく方が、より面白く聴けるかなあと。その点でお気に入りは、まずはベルトラン・キュリエ(Alpha)の演奏ですし、もっと攻めの方の演奏であればアンドレアス・シュタイアー(Teldec)を挙げたいと思います。決してぬるくはないけれど、その2つよりも落ち着いた感じの演奏で言えばマギー・コール(Virgin/Erato)も。

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(左からキュリエ盤、シュタイアー盤、コール盤)
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by ohayashi71 | 2016-03-01 23:28 | 本編


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